【仮想通貨】NEM/XEM の特徴と将来性

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1 NEM(ネム)とは?

New Economy Movement(新しい経済運動)
NEMとは、New Economy Movement の略です。
新しい経済圏を作ることを目標としてはじまった仮想通貨のプロジェクトであり、ビットコインのブロックチェーン技術をより良く改良した「多機能プラットフォーム」です。

新しい仮想通貨の発行機能、公証機能など、他のプラットフォームでもできる機能が多いものの、取引の承認システムとして Proof of Importance(POI)という仕組みを採用しています。

 発行日 2015年3月29日
 トークン名称 XEM
 総発行量 8,999,999,999XEM
 ブロックチェーン NEM
 承認システム Proof of Importance
 開発者 Utopianfuture
 公式サイト NEM公式サイト
 ホワイトペーパー NEMホワイトペーパー

1-1 通貨名:XEM(ゼム)

NEMのプラットフォームの中で、発行された仮想通貨の名前が「XEM(ゼム)」です。
NEMのパブリックブロックチェーン(誰もが許可なしにブロックチェーンを管理することできる)上で取引手数料を支払う際にも使用されます。

発行枚数は、8,999,999,999XEM(約90億)
すでに全て発行済みで、これ以上の発行は行われません。

1-2 ブロック生成間隔約1分

ビットコインでは1つのブロック作るまでに約10分かかるのに対し、NEMではブロックを作るのが約1分と時価総額上位の通貨と比べてもかなり早いことが魅力です。

生成間隔が短ければ、取引の承認完了までの時間が短いということです。
「取引が承認される ・チェーンに組み込まれる」ほど取引記録の正当性が高まるので、6つのブロック作られた時点で、取引が完全に完了したとみなすのが一般的です。
ビットコンでは約10分に1回生成されるので取引完了までに1時間かかりますが、NEMなら生成間隔が1分なので「6分」あれば「取引が完全に完了した」とみなすことができます。

1-3 スマートアセットシステム

NEMはスマートアセットシステムを基盤として構築されており、ユーザーはNEMを、 自分向けにカスタマイズされた、自身のアプリケーションとアセット用のブロックチェーンであるかのように使うことが可能です。

特定のアプリケーションに特化したスマートコントラクトを作る必要なしに、NEMは誰でも安全に使うことのできる、安定した検証済みの機能をブロックチェーン上で提供します。

スマートアセットシステムは高度にカスタマイズ可能なモジュール式の構造であり、エコシステム内で簡単に素早く開発を行えるシステムとなっています。

 

2 他の通貨と異なる特徴

NEMは、他の通貨と比べ大きく違うところが4つあります。

1 Proof of Importance
2 ハーベスト
3 ネームスペース・モザイク
4 送金時にはメッセージが必要

2-1 Proof of Importance

NEMでは、チェーン上に取引記録を記録する作業を誰が行うか決める コンセンサスアルゴリズム にPOI(Proof of Importance)という独自の仕組みを採用しています。
POIはPOS(Proof of Sake)を改良して作られたものです。

■ Proof of Sake プルーフオブステーク

POS(proof of stake)では「たくさん通貨を持ってる人+長期間通貨を保有している人」ほど承認作業の成功確率が高くなります。ビットコインで用いられているPOW(Proof of Work)では電気代がかかりすぎてしまうという問題を解決するために考案されました。

ただし、これにより通貨を溜め込んで使わない人が増えてしまうといったデメリットがあります。この流動性の低下の問題を解決するために考案されたのがPOIです。

■ POI のメリット・デメリット

メリット 〉取引の活発さを考慮することで流動性を保てる

XEMを使って経済活動を促す重要性(Importance)の高い人ほど承認権を得やすい仕組みになっています。
この重要度は保有している通貨の量だけではなく、取引の活発さも考慮して算出されるようになっています。なので、POSで問題になってしまう流動性の低下をある程度解決することができます。

仲間内で無意味な取引を繰り返し、不正に重要度をあげることができないように、取引が活発に行われている集団にはグルーピングを行います。そのグループの構成員が少ない場合は取引量が多くても評価はあまり上がらないようになっています。
つまり、無意味に取引しても意味がないということです。

デメリット 〉通貨の保有量が多い人が必然的に有利になる

今は単に通貨の保有量が多い人が取引の承認権をほとんど独占してしまっています。
重要度を算出する際、取引の活発さを考慮しているといってもそこまで重視されていないのが現状です。

2-2 ハーべスト(Harvest)

NEMは、ハーベスティングという独自のブロックチェーン承認過程を採用しています。これはビットコインのマイニング作業にあたるもので、取引を承認する作業のことです。ハーベストには「ローカルハーベスト」と「デリゲートハーベスト」の2通りの方法があります。

■ マイニングとの違い

マイニング
PCを使って新しくビットコインを作ること。
(新しく生み出すので新規発行される)

ハーベスティング
PCを使ってNEMを分けてもらうようなこと。
(新しく生み出すわけではないので新規発行されない)

■ ローカルハーべスト

ローカルハーベストは、自分でハーベストを行うという方法です。
ローカルハーベストを行うには、「Vested Balance(既得バランス)」が10,000XEM以上であることが必要です。

既得バランスは、NEM公式ウォレット NEM Nano Wallet  の中入れてからある程度の期間経過したXEMのことをいいます。

この条件を満たした上で、常にパソコンを稼働させておく必要があります。取引承認権が回ってくると、パソコンが承認作業を行います。

取引の承認権が回ってくる確立は重要度に比例して大きくなります。

ハーベストは約1分間に一度行われ、取引の承認を行うと1分間に行われた取引の手数料をもらうことができます

■ デリゲートハーベスト(委任ハーベスト)

デリゲートハーベストは、簡単にいうとローカルハーベストと違いパソコンの電源を切った状態でハーベスティングを行うことができます。
委任(自分に代わってしてもらうこと)という名の通り、他の誰かのコンピューター(スーパーノード)にハーベストの作業をお願いしておくということです。委任する際には、手数料として0.15XEM必要ですが、非常に安価なため委任ハーベストをするのが便利です。

■ スーパーノード

スーパーノードとは、簡単に言うと「全チェーン記録を保有した、アプリケーションサーバーの役割」を果たしています。このスーパーノードによりNEMの安全性は保たれています。

スーパーノードになるためには、300万XEMの他に様々なシステム的な基準をクリアする必要があります。この性能は毎日全てのスーパーノードを対象に計測が行われ、条件を満たしていないスーパーノードは報酬を受け取れない仕組みになっています。

ビットコインの場合は、全てのノードがフルノードなので「マイナー全員が全チェーンを保有する必要」があります。対してNEMは一般のノードが全チェーンを保有する必要が無く、ハーベストをスーパーノードに「委任できる(自分の代わりにしてもらう)」仕組みになっているのです。

NEMが「低スペックのPCでもハーベストができる」のはこのようにスーパーノードが、大きな役割を担ってくれているからなのです。

■ ハーベストのメリット・デメリット

メリット 〉電力をあまり必要としない

ハーベストのメリットは、ビットコインのマイニングのようにネットワーク維持に大きな電力を必要としないことです。また、デリゲートハーベストを導入することによって、高い計算力を持つスーパーノードが取引の承認を行うため NEMの送金スピードを向上させる ことになります。

デメリット 〉中央集権的になってしまう

デメリットとしては、スーパーノードが取引の承認を行っていることが多いため、やや中央集権的であるということです。
ただし、スーパーノードはNEMの大量保有者であるため、ネットワークを乱すと自分の保有しているNEMの価値が下がり、損をしてしまうため、スーパーノードが悪意のある攻撃を行う可能性はほとんどないと考えられます。

2-3 ネームスペース・モザイク

NEMでは、新しい仮想通貨を発行することができます。それに関わってくるのがネームスペースモザイクという仕組みです。

■ ネームスペース

独自のトークンを発行できるものは、単一のトークン名を付けるだけになりますが、NEMではまずネームスペースというものを得るところが特徴的です。

ネームスペースとは、インターネットで例えるとドメインのようなものになります。

ネームスペースはレンタルすることで取得できます。
もし仮に「crypto(暗号)」というネームスペースを取得すると、他の人はそれ重複して取得する事はできません。
このネームスペースを使う有効期限は1年間で、1年あたり100XEM必要になります。
このネームスペースは、通貨の住所のような役割を果たすためにあります。

また、サブドメインのようなサブネームスペースを1つのネームスペースにつき最大2階層まで取得することができます。

■ モザイク

モザイクはネームスペースやサブネームスペースで発行される仮想通貨のことです。ネームスペースがドメインであれば、モザイクはWEBページや画像などのファイル部分になるとイメージしやすいかもしれません。

XEM自体もNEMというネームスペースで発行されたモザイクで、「NEM:XEM」というように書き表されます。

モザイク発行には10XEMかかり、ネームスペース同様1年間の有効期限です。

2-4 送金時にはメッセージが必要

NEMの特徴的な機能に、メッセージというものがあります。ビットコインなど他の仮想通貨でもメッセージ機能を使うことはできますが、NEMでは取引所への送金の際にメッセージを必ず付けることになっているので、ユーザーがメッセージを使う機会が圧倒的に多いです。

■ メッセージ機能の意味

取引所にNEMを送金する際にメッセージを付けなければならないのは、どのアカウントにNEMを送金するかを識別するために必要だからです。もう少し詳しく言えば、取引所にNEMを送金する際には、「取引所のアドレスの中の、メッセージで指定されたアカウント」に入金が反映されるという仕組みになっています。

送金の際、メッセージを入力しないとNEM資産と混在することとなり、自分の資産がなくなる可能性があります。

■ ネームスペースがあれば入力不要

ネームスペースを持っていれば、送金の際のメッセージを省略することが可能です。

例えば、crypto というネームスペースを自分の取引所のアドレスに紐付けていたとすれば、取引所に送る際には@cryptoとするだけで、アドレスを入力することなく送金することができます。

 

3 通貨としての将来性

3-1 Ethereuに勝てるのか

NEMは簡単に言うと、何でもできるプラットフォームを目指しています。
ただし、同じようなプロジェクトは多数あり、その中でも一番時価総額が大きく強いのがEthereum(ETH)です。

ETHはBTCに次ぐ時価総額を持つ仮想通貨ですが、ETH上で作られたプロダクトはすでに数多くあり、プラットフォームとして一定の成功を収めています。
このETHと同じ路線を行くと、差別化が図れず存在価値が薄くなっていってしまう可能性があります。

ただしNEMは、ETHと同じく仮想通貨を作ることができます。 これをお店の出店で例えるならETHの場合だと、出店場所の選定から、デザイン、内装工事、求人、マニュアル作成まで、お店を立てる為の手順を全て自分で行わなくてはなりません。対照的にNEMは、APIを提供しているためFC(フランチャイズ)契約をするだけで、全てお任せで出店できるようなイメージになります。

イーサリアムはブロックチェーン技術を理解しているエンジニアしか仮想通貨を作ることができません。しかし、NEMは素人でも簡単にトークンを作成できます。ブロックチェーン技術どころか、コードすら書けない人でも簡単にトークンを作成できるのです。さらに、NEMで作成したトークンのコアは、NEMのAPIに依存するため不具合が起きにくい仕様となっています。

3-2 アポスティーユが広まっていく

NEMにすでにある機能としてアポスティーユ(Apostille)というものがあります。アポスティーユはいわゆる公証というやつで、土地や自動車の所有権の登記、契約書やメールなどのタイムスタンプ記録、売上データなどの監査が必要となるデータの記録などができます。

ブロックチェーンは改ざんが不可能であるため、公証にブロックチェーンを用いることによって、第三者を必要としない公証が可能となります。

ただ、Factom(ファクトム)という仮想通貨でもブロックチェーンを用いた公証を行っており、NEM独自のサービスとは言えません。

3-3 ファンが多く、コミュニティが活発

NEMはファンが多くコミュニティも強いという点で、NEMの将来性を感じます。
NEMのファンのことは、英語のmemberをもじってNEMberと呼ばれます。

NEMファンである暗号太郎さんは、渋谷にXEMで決済できる nem bar もオープンしています。

NEMバー公式サイト(https://nembar.tokyo/

他にも、NEM決済のできるフリーマーケット nemket(ネムケット)
NEMでの支払いができるフリマサイト nemche(ネムシェ)

などNEM決済のできるイベントやサービスが展開されています。
決済に使える仮想通貨というのはそう多くないので、決済手段として用いられるというのは大きなことだと言えます。

 

4 カタパルトでさらに進化する

カタパルト(Catapult)とは、テックビューロ株式会社が開発するプライベートブロックチェーン技術mijinに修正や改良を加え、一から新しく開発されたプロジェクトです。簡単に説明すると 大型アップデート のことです。カタパルト(アップロード)することで、決済の処理速度がとても早くなります。

下記でも説明しますが、1秒間に4000件の取引ができるようになるのです。

これはVISAカードと同じ速度で処理が可能になるということです。VISAは世界最速の処理速度と言われているため、NEMの処理速度も世界最速レベルになります。

mijinはもともとNEMのブロックチェーン技術をもとに開発されており、今度は逆にmijinのカタパルト(Catapult)の技術をNEMに導入する予定となっています。

■ 処理速度の向上
ビットコイン(1秒間に14件)やリップル(1秒間に3000件)よりも早い
■ アグリゲートトランザクション
仲介者を自動化(仲介者に払う手数料がなくなり中立に取引ができる)

カタパルトでは毎秒数千件のトランザクションを処理することが可能であり、ビットコインやイーサリアムで懸念されているスケーラビリティ問題を解決できるのではないかと期待されています。
競合であるイーサリアムもスケーラビリティの課題には取り組んでいる最中なので、カタパルトの実装がはやく行われればイーサリアムとの差別化ができるのではないでしょうか。

カタパルトは現在、mijinでβテストが行われている段階であり、mijinで実際にカタパルトへのアップデートが行われたあと、さらにNEMのブロックチェーンへの応用を行っていくという予定となっているため、まだまだ時間はかかると思われます。
ただ、もし毎秒数千件のトランザクションが実際にNEMで処理できるようになれば、送金がはやいことで有名なリップル(XRP)をも上回る送金速度となるため、期待はかなり持てると思います。

4-1 「 mijin 」とは

ブロックチェーン技術を ”誰もが簡単に” 利用できるように開発された汎用プラットフォームです。そもそもmijinとは、NEMのブロックチェーン技術を、誰もがプライベートにP2Pネットワークとして利用できるようにするために開発されたプラットフォームです。

mijinという名前は、今までの常識を打ち砕くということで敵を打ち砕く忍者の武器「微塵」に由来します。この新たなプラットフォームmijinを開発したのが日本企業のテックビューロ社です。

国内大手の仮想通貨取引所 Zaif を運営している、仮想通貨業界ではかなり名の知れたテックビューロはNEMと提携しており、mijinの開発にはNEMのコアデベロッパーも数人携わっています。

4-2 カタパルト3つの特徴

■ On-Chain Asset Modeling(オンチェーンアセットモデリング)

あらゆる資産(Asset)をトークン化することによって1つのブロックチェーン上で管理できる仕組みのことです。これによって、エンジニアがコーディングすることなく、経営者が自分で管理・設計をできるようになります。

■ Smart Signing Contract(スマートサイニングコントラクト)

マルチシグによって資産(Asset)をコントロールする仕組みのことです。

マルチシグとはマルチシグネチャーの略で、秘密鍵を複数に分割する仕組みを意味します。これによって複数の承認がなければ行動ができなくなるので、ハッキングなどによる不正操作の可能性を大幅に下げることができ、セキュリティがより強固になります。

■ Aggregate Transaction(アグリゲートトランザクション)

マルチシグが揃うと複数の取引がまとめて実行される仕組みのことです。

これによって、取引の処理速度が大幅に上がり、コストも削減することができます。また取引処理速度についてですが、毎秒約4,000件の処理が可能になるとも言われています。これは、ビットコインだと毎秒5件前後、取引処理が速いことでも有名なリップルでも毎秒約3,000件であることを踏まえるととてつもなく速いことがわかります。

4-3 カタパルトの実装日

2018年3月26日にmijin v.2(カタパルト)のベータ版リリースが発表されました。
注意してほしいのが、これはNEMへの実装ではななく、mijinでのベータ版リリースです。

NEMのカタパルト実装は2018年以降予定のままです。
カタパルト適用後は、Ethereumの機能とRippleを超える送金能力をNEMは兼ね備える事になります。