Innovators File#5 アモニック・パスカル・ヒデキ 全てのビットコイナーに贈る400年越しの「方法序説」

「ブロックチェーン関連の優秀なエンジニアを紹介して欲しい」

ブロックチェーン業界では頻繁に聞かれるフレーズだ。もはや誰もが知るように、深刻なエンジニア不足は日本にとって大きな足枷となっている。この業界では様々なバックグラウンドを持つ、あるいは何もバックグラウンドのないエンジニア達が、世界中を転々としながら活躍する。

その中には、匿名で活動するエンジニアも少なくない。ブロックチェーン関連の企業にとって、信頼があり即戦力となるエンジニアを確保する事は、最もクリティカルな問題だが、混合玉石の匿名のエンジニア達の中から、事業に最適な人材を探し出すためには、一体どれ程のリソースを割かなければならないのだろうか。

デカルトサーチ。人文学系の学問を排除し、数学と幾何学によるアプローチで、合理主義哲学の体系を構築した、ルネ・デカルトの名を冠するこの会社は、創業以来エンジニア専門のスカウト・ハンティング・ファームとして業界をリードして来た。同社は、クライアントの事業の成功を左右する、高度な技術者を、最適にリクルーティングするための、総合的なソリューションを提供する。

デカルトサーチ創業者である「アップローダ」こと、アモニック・パスカル・ヒデキ(Pascal Hideki Hamonic)氏の名前は、あなたが古いビットコイナーならば、一度は聞きた事があるはずだ。数多くのブロックチェーンプロジェクトに携わって来たアモニック氏は、黎明期より、東京のビットコインコミュニティの成長を支えて来た人物として知られる。

フランスで生まれ育ち、極東のこの地で、デカルトの夢を辿る秀才は、日本のブロックチェーン業界を、どう導くのだろうか。Innovators File#5アモニック・パスカル・ヒデキ氏:全てのビットコイナーに贈る400年越しの「方法序説」。

-まずパスカルさんの経歴を簡単に教えて下さい

アモニック:幼少期はフランスのヴァンセンヌという町で育ちました。パリから地下鉄で5分程の場所で、ヴァンセンヌ城が有名です。双子の弟と行動する事が多かった私は、あまり社交的な子供ではなく、とにかく勉強ばかりの生活でした。父親はフランス人で母親が日本人なのですが、両親共に厳しく、いつも勉強しなさいと言われていていました。「勉強しないと立派な人間になれないよ」と。そのため、興味があるものを自由に勉強するといった時間は、ほとんどありませんでした。

好きな科目は哲学や国語でしたが、就職にはエンジニアが有利な事から、グランゼコールに進学し、電子電機工学を専攻する事になります。グランゼコールには、ダブルディプロマの制度があったのですが、母親が日本出身だという事や、日本の漫画やJPOPが好きだった事もあり、3年目で東京工業大学に留学し、情報理工学研究科計算工学を専攻しました。

東工大では、音声認識の権威の古井貞熙先生の研究室に入り、音声認識や自然言語処理の研究に従事していました。来日して間もなかったので、日本語をもっと上手くなりたいと思い、フランス語と日本語間の対話システムの開発に取り組んでいました。勿論、それが直接日本語を学ぶ事に比べ遠回りだという事は、自分でも認識していました(笑)

卒業後は、金融の世界に入り、証券会社で先物取引(為替オプション価格付け)に使われるHFT(High Frequency Trading)システムの営業や、カスタマーサポートに従事しました。何故かエンジニアではなかったです。しばらく働いた後、誰かの指示で働くのではなく、自分で会社をやりたいと思うようになり、2007年に弟と一緒にエンジニアの人材紹介の会社を設立しました。

-デカルトサーチではどういった事業を展開していますか?

アモニック:主に東京のベンチャー企業にエンジニアの紹介をしています。創業当初は、計算工学やAI関連の技術者を紹介する事が多かったのですが、ここ4年はブロックチェーン関連のエンジニアが5割を占めます。紹介するエンジニアの9割は外国籍で、1割は英語が話せる日本のエンジニアです。ブロックチェーン業界では、国際的なチームでプロジェクトを進める事が多いので、英語の能力は必須になって来ています。ただ、私が来日した時に比べると日本人の英語力は明らかにレベルアップしていると思います。特にブロックチェーン業界の若い人達は皆しっかりと英語でコミュニケーションが取れていますね。

-大学時代にしていた研究でビジネスをする事は考えていますか?

アモニック:今はないですね。テクノロジーで世界を変えようと思った時期もありましたが(実際8年前に検索エンジンのスタートアップをやっていた時期もあります)、自分には向いてなかったです。グランセゴールの通っていた時から気づいていたのですが、数学や科学は本来の私の強みではありません。周囲の期待に答えるために、無理やり大学院まで、数学や科学を勉強してきましたが、私が本当に好きなのは哲学や言語でした。それに、テクノロジーの世界では、自分よりもずっと優秀な人達が沢山います。今は研究者として生きるのではなく、研究やテクノロジーがどう世界を変えていくのかを観察し、手助けする事に専念しています。

-ビットコインとの出会いはどういったものでしたか?

アモニック:証券会社にいた時から、金融の仕組みなどを調べていたため、ビットコインの存在は2011年頃から知っていました。東京ビットコインミートアップに参加し始めたのは、2013年7月からです。上位1%の富裕層が、世界の富の大部分を寡占している、現在の金融システムは健全だとは言えません。分散化された金融ネットワークにより、富が再分配される事は、良い意味で金融業界を変えると思っています。

ビットコインの意義を認識するようになったきっかけがあります。2013年7月にアンドロイドのアプリでロズウェルト事件(※1)を題材にしたゲームがあったのですが、そのゲームがビットコイン支払いを受け付けていたのです。その時、ハッとしたのです。政府やオーソリティにとって都合の悪いものや公に出来ないものでも、ビットコインを使えば応援できる可能性があるのでは、と思ったのです。

ロズウェルト事件の真偽は置いといて、世の中には政治的な理由や利権の関係で、日の目を見ない技術が沢山あります。医療の分野でも、エネルギー関連でも、政府やオーソリティ―の承認がなければ、法定通貨を使った資金調達は、ほぼ不可能です。ニコラ・テスラがその最たる例です。彼は明らかに政治的な理由により潰されましたが、実は、今もテスラの無線送電の研究を続けている人がいるのです。仮想通貨を使えば、そのような日の目を見ない素晴らしいテクノロジーや研究を支援し世の中に広く伝える事が出来ます。

-ブロックチェーン業界の今後の展望を教えて下さい。

アモニック:ブロックチェーンに様々な可能性がありますが当面の課題として、価格の安定した仮想通貨、スマートコントラクト、DAO(自立型分散型組織)、そして分散型の交換所が挙げられます。

仮想通貨を世の中に普及させる上で、価格の安定は重要です。そのため、私は以前ニュビッツという、ドルペグの仮想通貨のプロジェクトを日本から応援していた事があります。しばらく価格は安定していたのですが、最近ペグが崩れて価格が下落してしまいました。元々は分散化されていたコミュニティでしたが、ある人物に権力が集中してしまった事が原因かと思います。

人間は必ず欲が出てきますが、スマートコイントラクトを用いれば、テクノロジーを使って人間の欲望をコントロール出来ると考えています。PoSはまだ途上技術ですが、PoWにはない多くの可能性があります。PoWはフレキシンブルではないので、スマートコントラクトはPoSが主流になっていますよね。数年前は、多くの人々はPoSなんて実現不可能だと思っていましたが、今はデリゲートPoSなどのように、様々な発展を見せています。

DAO(分散型自立組織)はまだまだ普及していませんが、人治によらないプロトコルに支配された、分散型自律組織という概念は非常に重要です。仮想通貨のネットワークはセキュアにするために分散化されているので、そのコミュニティ自体も、分散化されたものでなければならないからです。例えば、分散型自律組織のためのフレームワークを提供しているDAOstackというものがあります。Daostackのプラットフォーム上で、各団体や企業は分散型の組織やスマートコントラクトを作成できます。私が応援している、人材マッチングのTalaoもこのDAOstackを用いています。

(参考記事:DAOSack 分散型自律組織による新しい経済圏の到来)

-最後にパスカルさんの人生のビジョンを教えて下さい。

アモニック:先ほど申し上げたように、政治的理由などで公になっていない技術を支援する事がひとつです。そして、もう一つは日本の国際化、多様化に貢献する事です。ブロックチェーン業界は、日本の国際化と多様化に貢献していますよね。この業界では、様々な国籍やバックグラウンドの人達が活躍しているため、バックグラウンドを気にしないというのも面白いです。そもそも、多くのエンジニアが匿名で活動していますし、完全に実力主義ですから。

デカルトサーチでは、今後も優秀なエンジニアの方々を、日本企業に紹介して行きます。また、業界を育てるための新しいビジネスも構想しているのでご期待下さい。もし、「仮想通貨・ブロックチェーン業界で働いてみたい」、「興味はあるけど自分がバリューを作れるか不安がある」といった方がいましたら、お気軽に弊社までお問い合わせ下さい。この業界はとにかく人手不足です。エンジニア不足は勿論ですが、その他にもマーケターやビジネスディベロッパー、コンプライアンスオフィサーなど様々な求人がありますよ。

※1 ロズウェルト事件:1947年7月アメリカ合衆国ニューメキシコ州ロズウェル付近で墜落したUFOが米軍によって回収されたとする事件。真偽は定かではないが世界で最も有名なUFO事件として「陰謀論」に大きな影響を与えている。

デカルトサーチ合同会社は国際性が高く、高度な技術力を持つIT/Webエンジニアや経験豊富なITエクゼクティブに特化した人材紹介会社だ。グローバルかつハイクラスな人材を探す企業に対してタイミング良く、効果的に、そしてコスト効率の良い方法で最適な人財を紹介する。同社の提供するサトシズカラ―はブロックチェーン業界に特化した、日本最大の転職支援サービスして高い評価を得る。

デカルトサーチ合同会社:http://descartes-search.com/