豊富な原油や鉱物資源を持ち、かつては南米で最も裕福な国だったベネズエラをハイパーインフレに直面する中で、ベネズエラの市民の間ではビットコインの決済が急速に拡大している。Per Coin Danceによると今週のベネズエラでのビットコインの取引高は約16億円相当に上るという。
国際通貨基金(IMF)は9日、ベネズエラのインフレ率が2019年中に年率1000万%に達し、またベネズエラ国内でのビットコイン取引市場の成長率が年内にラテンアメリカ内で137万%に達するとの予想を発表した。
Reason Magazineのジム・エプステインはベネズエラ市民間でのビットコインの流通を以下のように語る。
「ベネズエラではビットコインユーザーのコミュニティーが急成長しています。ビットコインを使いアマゾンやウォルマートで日常的に食料を購入しているのです。表向きは輸入規制があるのですが、マイアミなどにはビットコイン決済を受け付けるベネズエラ向けの購入代行と配達サービスがあるのです。彼らは、その、上手にベネズエラの関税をやり過ごすエキスパート達です(笑)。アメリカでは人々は”興味があるから”ビットコインを購入しますが、ベネズエラでは実用的だからビットコインを使うのです。」
社会党一党独裁を敷いたマドゥロ政権は「21世紀の社会主義」を掲げたものの石油依存の経済からの脱却を図る事に失敗し、長らく続いてきた党内での汚職を清算する事も出来なかった。
そして2014年の原油価格急落を受けて、原油に依存していたベネズエラの経済はその社会主義システムの維持が困難になりハイパーインフレに突入する事となる。2017年にマドゥロが「米国の帝国主義制度を排除する」としてドルから中国人民元に原油価格表示を切り替えた事で以前から敵対していたアメリカの虎の尾を踏む事になり、経済制裁をうけた事がベネズエラ経済への決定打となった。
マドゥロ政権はアメリカと敵対する国々との同盟強化を模索しているが、あなたがベネズエラの市民だったとして、頼りにするのは北朝鮮やイランとビットコインどちらだろうか。
ベネズエラではビットコインを介した日用品の購入だけでなくTip Me Bch!による国境を越えたアウトソーシングも盛んになっている。Tip Me Bch!はテレグラム上でビットコインキャッシュを送金できるサービスだ。
外国の委託者はベネズエラのテレグラムグループに通訳やデータエントリー、アカウント登録などの仕事を提示し、成約したらBCHで賃金を支払うといった使われ方がされている。


現在ベネズエラの最低賃金は1ドル以下だが法定通貨の介してベネズエラの人々にアウトソーシングを行う事は現実的に不可能だ。しかしビットコインを用いれば世界中どこからでも業務を委託する事が可能になり、そして文字通り彼らの人生は変わる。
ハイパーインフレによりベネズエラの平均賃金が急落したとしてもベネズエラの市民の価値や能力が急落する訳ではない。世界中どこにでも、そして誰にでも第三者の仲介なしに個人間で”価値の移動”を行う事が出来るビットコインは如何なる場合でも”個人の価値”そのものも守れる事を意味するのだ。