Innovators File#7 アレン・ファン「分散化されたOTCのプラットフォームの将来」

現在、中国本土では仮想通貨の取引所は規制されており、本土に住む中国人はBitflyerのような取引所を介して仮想通貨を購入する事は出来ない。 それにもかかわらず中国では仮想通貨・ブロックチェーン関連のユニコーン企業が多く生まれており、中国のブロックチェーンに関する特許の申請数は昨年225件で世界最多。二位のアメリカが91件だという事からも如何に中国市場が盛り上がりを見せているのかが伺える。

 

では、一般の人々は仮想通貨を取引していないのかというと全くそんな事はない。取引所が閉鎖された中国本土で活発に行われているのがWechatグループなどを使ったOTC取引(相対取引)だ。

 

日本でも増えつつあるOTC取引だが流動性に乏しく、見ず知らずの他人を信用しなければならないためトラブルも多い。Galaxy OTCは分散化されたネットワークにおいて、第三者の信用の担保に依存せず、セキュリティとユーザビリティを両立させたOTC取引のプラットフォームを提供する。彼らは今後どのようにしてOTC取引を使いやすく便利なものにしていくのだろうか。

 

Innovators File#7GalaxyOTC CEOアレン・ファン「分散化されたOTCのプラットフォームの将来」

 

まず始めにアレンさんの経歴を教えて下さい。

私は中国湖北省にある小さな農村で生まれ13歳までそこで過ごしました。両親は共に農業に従事しており、毎日、朝から晩まで働いていました。また、祖父母は私の生まれる前に他界しており、弟の面倒も見なければならなかったので、思い返してみると厳しい環境で育ったと思います。私の村はとても小さく貧しい農村で、楽しみと言えば近くの川で魚を釣ったり、カエルを捕まえたりといったささやかなものでした。中学生になった時に両親の仕事の関係で河南省鄭州市という大都市に引っ越す事となったのですが、それまでは林檎もバナナもサッカーも見た事がなかったのです。

その後、カナダの大学に進学してそこで7年程過ごす事になります。金融経済学の修士を所得した後に、カナダの保険会社に就職しました。しばらく働いていたのですが、当時の中国の経済成長率は目覚ましく、両親にも中国の方がチャンスがあると帰国を提案されました。カナダの生活は安定したもので私自身もその生活に慣れきっていたのですが、また新たなチャレンジをしてみようという考えが芽生え、2007 年に帰国しました。大学で金融を専攻していた事もあり、中国に帰国してからはベンチャーキャピリストとして働き始めました。これまで多くのIPOに携わって来たのですが、その時の経験は 未来や市場を予測する時の助けとなっています。

仮想通貨を始めて使ったのはいつですか?

2017年のはじめに友人にEthertradeというプラットフォーム を奨められた事が始まりです。Ethertrade は仮想通貨の投資やアービトラージを行っていたファンドのようなサービスでした。収支報告が明瞭ではなく、おそらくスキャムだろうとは思いつつも、過去二年の運用実績は安定してハイパフォーマンスだったためその友人と共に投資しました。しかしEthertradeは私達が投資した2か月後に閉鎖されてしまいました。Ethertradeが使っていたBTC-Eという取引所が、FBIにより閉鎖された事が原因だと言われています。投資したお金はFBIに没収されたままで、今もなお戻ってきていません。

 

始めての仮想通貨への投資でこのような結果になってしまいましたが、それがキッカケで、ビットコインやイーサリウムについて調べるようになりました。仮想通貨が何故生まれ、どんな意義があるのか、IPOとICOはどう違うのかといった事を考えるようになったのです。

 

既存の株式市場は、いわばローカルゲームのようなものです。例えば、中国本土の人は香港証券取引所には投資が出来ませんし、同じ会社の株式でも、中国本土と香港の取引市場により値段が違います。住む地域により参加制限があるのはフェアではありません。一方で、ICOの場合スキャムも多いですが、本当に価値のあるプロジェクトならば国境を越えて世界中の人々とそのアイディアを共有し、世界中の人々がそのプロジェクトに投資する事が出来ます。そのためICOはその人と別の世界をつなぐキーになるかも知れないと思い仮想通貨業界に参入しました。

-OTCプラットフォームを作ろうと思ったキッカケを教えて下さい。また現在中国ではどのようにOTC取引が行われているのですが?

中国本土のように、政府が取引所を規制している地域では、人々はOTC取引以外に仮想通貨を手に入れる方法がありません。中国のOTC取引においては一般的にWechatグループが利用されます。Whchat グループの管理人がメンバー同士の取引の仲介をするのです。

 

例えば、ビットコインと人民元間での取引が約定すると、Wechatグループの管理人がビットコインの売手からビットコインを一度預かります。次に、管理人はビットコインの買手にWechatPayで人民元を売手に送金するように伝えます。着金を確認すると、管理人が買手にビットコインを送金します。取引が公正に行われるかは、その管理人の与信に依存するのですが、大きな額になると、管理人が持ち逃げしてしまうといった事もあります。大きな額の取引では弁護士がOTC取引の仲介する事もあります。このような中国の現状を変えたいという想いから、私達は複数の仮想通貨に対応しており、自分の資産を自分で管理できるウォレットと信頼のおける分散化されたOTCのプラットフォームを作る事にしたのです。

 

-OTCプラットフォームの法規制の現状を教えてください。

各国の金融庁は各中央集権型の取引所のセキュリティレベルを保つために、様々な法規制をします。分散化されたOTCのプラットフォームは中央集権型の既存の取引所に比べて、安全であり監督する際のコストが削減されます。しかし、仮想通貨に関する法規制は各国で違い、特にOTCに関しては法律が追い付いていません。そのため、私達は各国の法律に準拠するために、多くの弁護士の助言を受けてまわっています。日本の弁護士にも多く会ってきたのですが、法定通貨を使わない仮想通貨のみのOTCに関しては、日本では法律が出来ていないため、どのようなライセンスが必要になるのか現在のところ結論が出ていません。そのため、今は日本においてOTC取引のサービスのリリースを見合わせており、ウォレット業務 のみを紹介しています。

 

-OTC以外にも重要なトピックはありますか?

 セキュリティ トークン(証券トークン)です。例えば、ある会社の1株を1トークンとするの株式を自分のウォレットで保管する事が出来るようになります。また、中国人セキュリティトークンがあれば、もはや証券取引所は必要ではなく、その会社である私にとってナスダックやロンドン証券取引所に上場している会社の株式を買う事は困難です。セキュリティ トークンを使えば世界中の誰しもが各国の証券取引所の垣根を越えて株式を売買し、自分で資産を保管出来るようになります。既存の金融システムと違い地域ブロックチェーンはシステムが止まる事がなく、常に世界中の人々にオープンなので、これから金融の世界を大きく変えると思います。