Innovators File#4 北野博紀「Nem決済限定オンラインフリーマーケット”Nemche”の挑戦」 

「面白い起業家がいる。」

都内某所で開催されたミートアップでそう紹介された若き起業家は落ち着いた物腰の好青年でありながらブロックチェーンの話題になると語気に熱を纏わせ、冷静なアセスメントをする一方で一度動いたら世界中どこへでも飛んでいく。「こんな若者が増えれば停滞する日本も変わるかも知れない」そんな期待を抱かせる不思議な魅力を持つ青年だった。

株式会社ビットラボ代表・北野博紀氏。

メガベンチャーでビッグデータの解析に携わっていた彼はブロックチェーンに魅了され昨年この業界に参入した。北野氏の運営するNemcheは仮想通貨Nem決済限定のオンラインフリーマーケットサービスだ。依然として一般の人々の間では投機の対象に留まっている仮想通貨をステージアップさせるために決済の場を提供したいという想いがあったという。

コインチェックのハッキング事件を受けて不本意な形で知れ渡る事となってしまったNemだが、新しいコンセンサスアルゴリズムやスマートコントラクトなどの技術的なインパクトファクターがある事から日本でも多くのファンがいる。Nem BarやNem Cafeのような草の根のコミュニティ活動が盛んな事もNemの特徴だ。

何故、他のアルトコインではなくNemなのだろうか。彼の人生を変える事となったブロックチェーンの持つイデオロギーと社会的意義とは。

 

Q:まず始めに北野さんの経歴を教えて頂けますか?

北野:大学の専攻は経済学部でした。経済の仕組みなどを勉強するのが好きだったのですが、学生時代の友人にはITやテック系の人も多かったです。新卒で旅行会社に就職したのですが、2、3年すると周りのIT系の友達が一人前のエンジニアになっていくのを目の当たりにする訳です。自分もエンジニアとして生きる事を考えるようになり「変えるなら今しかない」と25歳の時に人生をピボットしました。

その後一からプログラミングの勉強をしていって様々なシステム開発に携わりましたが、主にビッグデータ活用のためのシステムに関わる事が多かったです。その過程でデータベース運用にも興味を持ち、メガベンチャーでビッグデータやグロスハックの業務をしていた時期もあります。新しい技術は何でも試してみようとAIやビッグデータなどを調べていた際にブロックチェーンに出会ったのですが、ここ数年でこんなにインパクトがあるのはこれしかないと直感的に思いました。元々独立志向があった事もありブロックチェーンの事業をやるためにビットラボを起業しました。

 

Q:ブロックチェーンのどんな所に魅かれたのですか?

北野:絶対に落ちない分散化データベースという点です。サーバーマネージメントって結構大変なのです。頻繁に落ちたりしますし(笑)。サーバーマネージメントやデータベースの運用をやっていた経験があって、その大変さが分かるからこそ中央サーバーではなく分散化されたネットワークでデータベースを管理する事の凄さを実感しました。また2017年の秋に宍戸健さんと出会った際にブロックチェーンの持つイデオロギーについても教えてもらった事でそちらの方にもはまっていきました。

 

Q:勉強会などを通じてマイニングの普及活動もされてますよね?

北野:始めは技術的な興味からマイニングを始めました。日本では利益が出ないと言われていましたが、やってみると意外と利益はちゃんと出るのです。マイニングはインターネットと電気さえあればどこでも出来ます。地方での新規事業と悩んでいる人は多いのでマイニングは地方創生の種としても有効だと思います。またマイナーは仮想通貨のネットワークにおけるノードの役割があるのですが、現在仮想通貨のマイニングは中国や北欧に集中していて、真に分散化されているとは言えません。世界にノードが分散化されてこそ分散化ネットワークですし、ハッシュパワーを寡占する中国のマイナーが日本のノードを選択的にブロックする事も技術的には出来てしまいます。そのためノードの力を持つという事は国としても重要なのです。昨今のハッキング事件を受けてPoWには批判が集まっていますが、Powならではの良さもあるのでマイニングの意義を多くの人に正しく理解してもらう活動を続けて行きます。

Q:先日中国の深センに行かれたそうですがどんな印象を受けましたか?

北野:深センでは今まで培われてきたハードウェアの技術とソフトウェアの技術とが組み合わさり上手くシナジーが生れています。枯れた技術の水平思考とういう言葉の通り、既製技術を現代にアレンジする適応力は物凄いものがあります。マイニング機材のメーカーのホームページの履歴を辿るともともとは普通の電子基板の商社だったりするのです。中国製のASICなどの採掘機材は皆同じような形をしているのですが、これは金型を使いまわしているためです。それによってスピーディーに、そして安価に採掘機器を製造出来るのです。深センの採掘機メーカーのスピードと量には圧倒されました。

深センには一大問屋街がありまして、とあるビルは1フロアがヒカリエ程の大きさなのですが、1階から11階まで全て電子部品の問屋が入っていてその内4階と5階はほとんどASICなどのマイニング機材の問屋でした。もちろんビットコイン決済も可能で、中国元よりもビットコイン決済が良いと言う雰囲気すらありました。中国は表向きには仮想通貨を規制していますが、深センは経済特区という事もあり政府がサンドボックス的な実験場にしているように見受けられます。元々は市が後押ししていたのですが今は行政の力添えが必要ない程のエコシステムが出来上がっています。2018年1月に深センで行われたブロックチェーン業界のカンファレンスにはHoubiやviaBTC、Binanceのトップが集結していました。

 

Q:ネムシェを運営されてますがNEMの良い所を教えて下さい?

北野:NEMの良い所は決済に使うためのインセンティブが設計されている事です。資本主義社会ではお金を使うモチベーションが弱いという側面がありますが、ネムのコンセンサスアルゴリズムのPoI(Proof of Importance)は使うほどブロックの生成(ビットコインでいうマイニング)できる可能性が上がるので、使わないと相対的に損をする仕組みになっています。そのため草の根のレベルでネムを普及させようという動きがあるのも面白いです。先日、福岡で開催されたネムカフェというコミュニティイベントに参加して来たのですが、彼らは現実世界でネムを普及させようという草の根の啓蒙活動をしています。市の後押しもあり400人程集まったのですが、地方でこの規模のイベントが開催される事は他のアルトコインではなかった事です。

日本におけるネムの認知度は高いものの、依然として投機対象としての見方が多いのが現状です。実店舗で決済できる場所も限られています。そこで、ビットラボではオンラインで個人間のNem決済取引ができるマーケットプレースのネムシェを提供しております。今年は決済などの実需が拡大していく年になると考えているので普及活動も頑張って行きたいと思います。またネムシェでは海外版のリリースの準備をしています。仮想通貨は国境を超えた時にインパクトが生れるので国際的なサービスにしてこうと。NEMはシンガポールに財団があるので、始めは東南アジアを中心に展開していきます。またネムシェのシステムを応用した複数の暗号通貨決済ができるクリプトマルシェ(仮)も準備中です。

Q:Dappsについてはどうお考えですか?

北野:Dappsは将来的には普及して行くと思います。ただ今のフェーズからDappsのようにブロックチェーン上で作られたサービスが普及するというのはハードルが高いのではないでしょうか。今はまだは決済手段として仮想通貨を普及させるべき段階だと考えています。

 

Q:業界の将来は?仮想通貨はスタンダードとなるようなものは出てくるでしょうか?

北野:スタンダードとなったものだけが残るというよりは、様々なブロックチェーンが共存していくと考えています。ブロックチェーンを作るという事はひとつのコミュニティと経済圏を作るという意味合いがあります。将来的には各自が自分の志向に合ったブロックチェーンを使い、様々なブロックチェーンが役割分担をしつつ共存して行く世界が実現すると考えています。例えばJaxxはマルチカレンシーに対応していてシェイプシフトという機能があるのですが、これによりビットコインキャッシュしか手元になかったとしてもイーサリウムに変換して決済を行うといった事が出来ます。またアトミックスワップのようなインターブロックチェーンの技術が今後進歩していけば人々が異なるブロックチェーンを使う事が障壁ではなくなって行くと思います。

 

Q:最後に日本の仮想通貨業界について一言お願いします。

北野:日本の場合はこれだけ仮想通貨業界に熱があるのでもっと上のステージに行ける可能性があるだけでなく、ブロックチェーンは日本復興のカギになるかもしれません。ブロックチェーンの「分散化」のアイディアは脱東京一極化および地方分権化とも相性が良いですから。とにかくこれから日本のブロックチェーン業界を盛り上げて行きたいです。

 

ネム決済限定オンラインフリーマーケット: Nemche

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