KIRIK 「プログラミングのいらない,誰でも簡単に扱えるスマートコントラクト」

セマンティックコントラクトを提唱するKIRIKは一般の人にとっては複雑すぎるブラックボックスになってしまったブロックチェーンとスマートコントラクトに革命を起こすかも知れない。

「我々はテクノロジーに囲まれて生活を送っていますが、テクノロジーは指数関数的に進化し、より一層複雑になっています。私達は今後テクノロジーとどうやって向きあっていくべきでしょうか。私達の子供たちはテクノロジーをどうやって再びコントロールしていくべきでしょうか。もしくはテクノロジーにコントロールされていれば良いのでしょうか。」
KIRIK CEO ヴィタリー・グミロフ氏

 

【人々を置き去りにするテクノロジー】

「第一法則:ロボットは人間に危害を加えてはならない.またその危険を看過することによって,人間に危害を及ぼしてはならない」
アイザック・アシモフ ロボット三原則

半世紀以上前のこのあまりにも有名な警告に現代の人々は強い臨場感を覚える。AIチャットボットのTayがツイッター上に公開されると、過激で差別的な発言を繰り返すようになりマイクロソフトはリリースからたった16時間後にはサービスの停止を決定した。またグーグルのアルゴリズムが女性に対して低所得な仕事の広告を提示しがちだという事が知れ渡ると、グーグルが予期していなかった規模の騒動となった。

 

 

【いまだに人々の生活を変えていないスマートコントラクト】

契約の締結・履行を自動化しよりセキュアでより効率的にするというスマートコントラクトの概念は、1996年ニック・サボーにより世界で初めて提唱された。代表的なスマートコントラクトのプラットフォームであるイーサリウムには、扱いが難しい、外部ネットワークとの連携に問題がある、トランザクションコストが不安定といった課題が残されている。プレインターネット時代のように異なるプロトコルの1500以上のブロックチェーンが相互連携しないまま乱立しており、その多くが法的拘束力を持たないという事も、実社会への導入の妨げとなっている。

また現在のスマートコントラクトは人々が思っている程、”スマート”と言えるものではない。イーサリウムによるスマートコントラクトでは、クライアントの「要求仕様書」はプログラマーがSolidityを用いてコーディングする事により「実装」に移されるのだが、人間が介入する事で顧客の要求仕様と実装の間で暫しギャップが生じがちだ。

 

例えば、あなたがとある弁護士にスマートコントラクトの作成依頼をしたとする。その弁護士はクライアントから主訴や要件を抽出し、法的拘束力の契約書を作成する。それを元に(コーディングの出来るクリプトロイヤーでもない限り)スマートコントラクトを扱えるエンジニアにプログラミングを依頼する。さらに監査の出来るエンジニアも用意しなければならないし場合によっては金融、会計など他業種の専門家のチームアップも必要だ。各ステップで多くの専門家が介入する事は誤謬や誤解の元となる。現在のスマートコントラクトは実は人々が思っている程、自動化されている訳でもなければ、低コストでもないのが現状だ。

「今後ビジネス同士が繋がってゆく過程がスマートコントラクトにより自動化されていく事は経済的に自然な事と言えます。しかしスマートコントラクトといっても法的拘束力なしには単なるコードの塊でしかありませんし、実際のビジネスとの間には大きな溝があります。私達はスマートコントラクトを如何にして実社会の需要にフィットさせていくかという課題に取り組んでいるのです。」
KIRIK CEO ヴィタリー・グミロフ氏

 

【誰でも簡単に扱えるセマンティックコントラクト】

「3Dプリンターをイメージしてください。仕様書を読み込めば忠実に3Dモデルを表現してくれる3Dプリンターのように、キリクスマートコントラクトはあなたの要求書を数学の公式に元づき、正確かつスピーディに実行に移します。」
KIRIK CEO ヴィタリー・グミロフ氏

 

KIRIKの提唱するセマンティックコントラクトはプログラミングが不要で、自然言語のみによって誰でも簡単に扱える次世代のスマートコントラクトだ。セマンティックコントラクトは ∆0-論理式いう数式のルールの元に記述される一連のプロトコルから構成されており、ユーザーが自然言語で記述した仕様書を正確かつ自動的にプログラミング言語に翻訳し、法的拘束力のあるコントラクトを作成する。

ユーザーはビジュアルエディターというツールを用いてテンプレートを辿るだけで簡単にスマートコントラクトの仕様書を作成できる。自然言語で記された契約書をアップロードする方法もあるが、いずれにせよ誰でも簡単に扱える。

KIRIK のセマンティックコントラクトの基盤なるプロトコルは∆0-論理式を元に、著名な数学者であるセルゲイ・ゴンチャロフ、ユーリ・イェルショフ、ディミトリ―・スヴィリデンコの三者により提唱された。スマートコントラクトのプラットフォームを作る上で基盤のレイヤーを裏付ける数学の理論は必須だという。

 

【他のブロックチェーンや既存のシステムとの互換性】

多くのブロックチェーンは、相互運用が出来ず、既存のシステムとの互換性に問題を抱えている。所謂オラクルの課題だ。KIRIK セマンティックコントラクトのプラットフォームは他のブロックチェーンや既存の金融システムとの互換性を備えている。既存のOSや他のブロックチェーンはKIRIKのプラットフォーム内に独自のドメインとノードを作る事が出来るため開放的なエコシステムが形成される。KIRIKは乱立する数多くのブロックチェーンを繋げ、実際のビジネスシーンに導入するためのプラットフォームなのだ。各トランザクションはIOTAにアンカリングされるためスケーラビリティ問題も解決している。

「私達は既存のブロックチェーンプロジェクトと競争するつもりはありません。それぞれのブロックチェーンプロジェクトが人々の生活に届けるための架け橋になりたいのです。」
KIRIK CMO エドアルド・ジハンガリャン氏

 

【過去の実績】

ホワイトペーパーで壮大なビジョンを描くもののプジェクトが一向に進まず消えゆくブロックチェーンプロジェクトが多い中でKIRIK のセマンティックプロトコルは2012年からの運用実績がある。ロシアやヨーロッパを始めとする世界各国の通信会社や銀行のSDP(※)などに採用されており、利用しているユーザーは2億人に上る。今回KIRIKがリリースしたロードマップは実績のあるセマンティックプロトコルを分散化されたプラットフォームにしていくというものだ。ガミロフ氏は法律事務所やIPライセンスの会社やビジネスブロックチェーンを扱う会社などで大きな需要があると自信を見せる。

(※:SDP(service delivery platform)は既存の通話サービスや電子メールなどのデータ系サービスを組み合わせ,新しい通信サービスを開発し実行するための基盤)

 

【オープンなコミュニティ形成】

KIRIKは今後、日本でのコミュニティ育成に力を入れていくという。テレグラムチャットやフェイスブックページは全ての人にオープンで、今後日本でもミートアップやエンジニア向けの教育プログラムを実施していく予定だという。

画像出典:KIRIK
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