モナコインを襲ったSelfish Mining 

モナコインのブロックチェーンが採掘者によるSelfish Mining(Blockchain Withholding Attack)という攻撃を受けた。

Selfish Miningは悪意のあるマイナーが非公開でブロックを採掘し続けて、一定時間隠し持った後に公開しする事で本来のブロックチェーンを置き換えてしまうという手法。

PoW(Proof of Work)のコンセンサスアルゴリズムにおいて、マイナーはブロックを採掘する際にネットワーク全体にブロードキャストする事になっているのだが、今回の攻撃者はブロックを公開せずに生成し続けていた。そのためブロックチェーンが二つに分岐してしまったのだが、PoW では二つのチェーンに分岐した場合にはより長いチェーンを採用する事になっているので本来のブロックがより多くのハッシュパワーを持つ攻撃者の生成したブロックに置き換えられてしまった(Reorg)。

そのため起こってはいけないはずの二重送金が発生した。今回の事件の被害額は1000万円程と言われている。MtGoxやCoincheckのような過去のハッキング事件に比べると被害額そのものは大きいとは言えないが、取引所のシステムではなくブロックチェーンそのものが攻撃されたというインパクトは大きい。

今回の攻撃はモナコインのみなわずProof of Workを採用している他の仮想通貨も対象となりえる。そのためネットではPoW自体への疑問を呈する声まで上がっている。今回の事件によりPoW自体を否定するのは飛躍しすぎだろうが、少なくとも、このコンセンサスアルゴリズムがITに新たな革命を起こすまでには時間がかかりそうだ。

各取引所は今回の事件を受けて取引承認に必要な承認数を上げるという対策をしている。当然、取引認証の時間が遅くなるというデメリットが生じるが、ユーザビリティとセキュリティはいつでもトレードオフだ。

実はこのSelfish Miningに関してビットコインのホワイトペーパーにおいてサトシ・ナカモトは想定している。

もし欲深い攻撃者が良心的なノードの合計を上回るCPUパワーを作り出す事が出来たとして、攻撃者はそのパワーを使って、他の良心的なノードから自分の支払った金額を盗んで取り戻すか、新しいコインを作り出すのかの選択を迫られることになり、おのずと自分の資産価値とそれを支えるシステムを損なうよりも、ルールに従って行動し、他の全ノードを合わせたよちも多くの新しいコインを作り出すほうが、自分の利益になると考えるだとう。
(ビットコインホワイトペーパー)

擁するに、ブロックチェーンを乗っ取る事の出来る程のハッシュパワーを持っているならルールに従って採掘した方が利益が出るという見立てだ。

今回の犯人は公開直後に別の仮想通貨に換金していたと言われている。さっさと別通貨にしてしまえばモナコインがどうなろうが関係はない。

2014年1月1日にMr.Watanabeを名乗る人物によって開発されたモナコインは当初2ちゃんねる等で愛好家たちの中で慎ましやかに流通していたものだったが、近年の仮想通貨バブルによる市場の拡大は彼らのユートピアンなコミュニティを鑑みなかった。