「私のクリプト履歴書#4」”ミス・ビットコイン”藤本真衣

先日、Cryptoweekly は、“THE 100 MOST INFLUENTIAL PEOPLE IN CRYPTO“(仮想通貨業界で最も影響力を持つ100人)を発表しましたが、日本人で唯一トップ100入りを果たしたのがミス・ビットコインで知られる藤本真衣氏。2011年にビットコインに出会った藤本氏は、常に仮想通貨・ブロックチェーン業界の最前線で活躍してきました。「私のクリプト履歴書#4」では、そんな彼女の見て来た仮想通貨・ブロックチェーン業界と今後の展望について語って頂きました。

ビットコインとの出会い

-はじめに藤本さんの経歴を教えて下さい。

大学在学中に、家庭教師の営業の仕事をしていたのですが、主に勉強が苦手な子向け対象としていました。出会いがきっかけで変化する子供たちの変化を見るのがとてもやり甲斐があり、仕事に夢中になり大学を中退し、その仕事に専念するようになりました。

その後、家庭教師の営業を個人事業主として7年間やったのち、やれる事はやり切った感があったので、BtoBの仕事も考えるようになり、上京して広告代理店として設立したのがグラコネです。グラコネは「つながるをつくる」というコンセプトなのですが、当初は、ブロックチェーン業界に限らず、様々な業界のクライアントからPR案件を受託して、キャスティングやイベントのプランニングなどに携わっていました。

-ビットコインはどのようにして知ったのですか?

2011年に12月15日、英会話の先生に会いに上京した際、たまたま、紹介されたのがロジャー・バーだったんです。ロジャーは当時から「これは革命を起こす通貨になる」と熱っぽくビットコインについて語っていました。

英会話の先生とのディナーに乱入してくるやいなや、いきなりまくしたてられて、何をいっているのか、ほとんど理解できなかったのですし、はじめは「なんなんだこの人は」って思いました(笑)でも、その中で、私にとってのフックとなったのが「ビットコインは、海外に送金する際にも、ほとんど手数料がかからない」というところでした。

当時、私はキッズ時計と言うwebサービスの立ち上げに携わっており、世界の子供たちに対する寄付のプラットフォームの構想を持っていました。そこで、障壁だったのが、法定通貨を介した場合の海外送金の手数料の高さです。当時のビットコイナーの中にも、海外送金の手数料の高さから、ビットコインに傾倒するようになった人も多かったと思います。

とあるメンターの先見眼

-どのようにして傾倒していったのですか?

普段から、私は何か勉強する時には、専門家と一緒にディスカッションしたりしながら理解を深めるので、仮想通貨に関しても、エンジニアや金融業界の人などに色々と質問をしてまわりました。ロジャーを色々な人に紹介したのですが、当時は、99%の人に「そんなの詐欺だ」と頭ごなしに否定されました。

でも、その中で唯一ビットコインに対して肯定的だったのが、私が長年お世話になっているメンターでした。彼は、メディアなどには出てきませんが、起業家としても、投資家としても長年の実績があり、私が信頼を置いている人です。彼だけは「藤本さん、10年後絶対状況が変わっているから絶対に今からビットコインについて勉強しておいた方がよいよ」と、ビットコインの持つ社会的意義やポテンシャルについて見抜いていたのです。

仮想通貨について深く理解するのには、技術、金融、など様々な知識が必要ですが、私はエンジニアではないですし、金融のバックボーンもありません。なので、そのメンターと一緒に、サトシ・ナカモトのホワイトペーパーを何度も読んだのですが、彼は、ITの黎明期の話や、お金の歴史の話などを交えながら、様々な角度からビットコインについて解説してくれました。

その後も、周りの人達に助けられながら、ビットコインについて調べていったのですが、この業界は、数日で状況が変わりますし、常に勉強を続けないといけないです。一週間のうち、2,3日、他の仕事をしているだけでも取り残されてしまうと考え、仮想通貨・ブロックチェーンに専念するようになりました。

私は、技術的な事をすべて理解しているわけではありませんが、「大きな社会的な変化が起きる瞬間に立ち会えるかもしれない」という直感はありました。なんというか、そういう”直感”は結構自信があるんです(笑)

“勝手に”ミスビットコイン

その後の仮想通貨・ブロックチェーン業界でのキャリアについて教えてください

ビットコインにハマった私は、ブログとYoutubeでビットコインについて発信するようになったのですが、本格的に仕事としてやるようになったのは、3年前に仮想通貨取引所のZaifからPRのオファーを頂いたのが始まりです。

最初は、「”勝手に”ミスビットコイン」と名乗っていたのですが、当時のZaifの社長さんから、「仕事としてやっているんだし”勝手に”とか取っていいんじゃない?」と言われて、それからはミスビットコインと名乗るようになりました(笑)

当時、ありがたかったのが、ZaifのPRだけではなく、仮想通貨の事を正しく伝える啓蒙活動も、やらせてもらえた事でした。当時は良いメディアがあまりなかったので、「みんなの知識が深まるようなコンテンツを作りたい」という考えにも賛同してくれましたし、インタビューひとつとってもかなり自由にやらせて貰えました。

その後、他のプロジェクトからも依頼を頂くようになりました。日本が資金決済法を改正してからは、世界中から日本が注目を集めた事もあって、海外のプロジェクトのマーケティングやPRの依頼も頂くようになりました。

英語はもともと話せたのですか?

まだまだ全然、不十分で勉強中です(笑)ここ2年は、海外のプロジェクトから案件を受けるようになり、海外に行く機会も多かったのですが、2年前は、ほとんど喋れませんでした。宍戸健さんや、ジミー本間さんなど、周りの人達に助けてもらいながらなんとかやってきた、という感じです。

KIZUNA「ビットコインを使った寄付プラットフォーム」

KIZUNAについて教えて下さい。

7年前から寄付のプラットフォームの構想はありましたが、当時はビットコインをそもそも使っている人がほとんどいなかったので、啓蒙活動とPRを優先していたのですが、ある程度認知度も高まってきたので2年前にビットコインを使った寄付のプラットフォーム”KIZUNA”をリリースしました。KIZUNAでは、集まった寄付金をビットコインを通じて世界中の支援が必要な団体に直接送金をしています。

相場の冷え込みと、今度の展望

現在の相場に関してどのように考えていますか?

元々、仮想通貨自体がベアとブルを繰り返してきましたが、今回の相場は深刻だと思います。 個人的には、今後、”確信めいたもの”がないと上がらないのではないか、と考えています。でも、例えばカストディ。新しいキラープリとなるようなものが出てくれば、業界自体が次のステージに行ける可能性があります。

大手企業や機関投資家の参入が増えてきた事や、規制が厳しくなってきた事をあげて、中央集権化していくプロジェクトが増えて来た、という声もありますが、必ずしもそれが悪い事だとは思いません。ユーザーからしたら安心に繋がりますし、業界全体の信頼にもなります。

その一方で、相場に関係なくDEX(分散化取引所)やDapps(分散化アプリケーション)の開発も進んでいるので、長期的には、悲観的には見ていません。よく、仮想通貨は終わった、という声もありますが、まだ始まってもいません。値段は下がっていますが、イーサーのウォレットの数も去年に比べて約2倍に増えていますし、アプリケーションも増えているので、今後ヒット作も生まれるのではないかと期待しています。

また、ゲームに関しては、マスアダプションにとっての鍵になると思っています。先日、マイクリプトヒーローズやクリプトンの人達と既存のゲーム業界の方向けのミートアップを開催したのですが、皆さんブロックチェーンを使ったDappsゲームに対してとても興味を持たれているのが印象的でした。

with B 「 仮想通貨・ブロックチェーン業界特化型転職支援サービス 」


withBの立ち上げのキッカケについて教えて下さい。

先ほども、お話したように、私はエンジニアではないですし、金融のバックボーンがあるわけではないので、出来る事は限られています。その中で業界に貢献したいという想いをずっと持っていたのですが、ある日、「仮想通貨業界は人材が不足しているよね~」といったツイートをしたら、業界の人達から沢山のメッセージを頂いて、結構反響があったのです。

みんな人材の確保に困っているんだなと実感しました。そんな背景があって、興味があっても、よくわからないと言った人達と、人手不足に悩む事業者の方々との架け橋がしたいと考えてWirhBを立ち上げる事になったのです。

WithBでは不定期でジョブフェアを開催しておりますが、候補者ひとりひとりに対して個別に相談も行っています。この業界の企業さんは、どこも、それぞれ個性がありますよね。

取引所ひとつとっても色が違いますし、強いイデオロギーを帯びた、ビジョンドリブンな会社もあれば、金融出身者がメインの会社もあります。その人にとって、一番幸せな働き方が出来る企業を紹介できるように、心がけています。

仮想通貨・ブロックチェーン業界の魅力

最後に仮想通貨・ブロックチェーン業界の魅力について一言お願いします。

毎日違う景色が見れるので、エキサイティングだと思います。私は冒険心が強い方ですが、そういった方にとっては、こんなに楽しい業界はないと思います。仮想通貨はもう終わったという人もいますが、私からすると「まだ、始まってもいません。」逆に、今このタイミングで参入すれば、大きな変化に立ち会える可能性がありすし、業界内で、第一線で活躍できるチャンスに溢れています。

私は、人の幸せは、人それぞれだと思っているので、強要するような事は言いたくないのですが、自分にとって、ぴったりな生き方があるのを知らずにいる事は、すごくもったいないと思います。とくにエンジニアの方にとっては、毎日、新しい事にチャレンジできますし、世界観やビジョンを共有できる人達と働く事ができたら、本当に楽しいと思いますよ。

その意味でも、もっと多くの人に仮想通貨・ブロックチェーン業界を知ってもらう活動を続けていきたいです。

【藤本真衣】

藤本真衣:株式会社グラコネ代表。日本を代表するビットコイン、ブロックチェーンのエバンジェリスト。世界最大のマイニング会社Bitmain創業者・Jihan Wu氏や世界最大の仮想通貨取引所BINANCEのCEOであるCZ氏など、この分野の世界的専門家とも親交が深く、CryptoWeeklyの世界のインフルエンサーリスト100にも選ばれた。また日本初のビットコインによる寄付サイトKIZUNAを立ち上げる。ブロックチェーンエンジニアの就職・転職支援会社withB 、韓国の医療スタートアップ企業Mediblocなど、国内外のブロックチェーンプロジェクトのアドバイザーを多数務める。