大手電機メーカー・ソニーは15日、ブロックチェーン技術を応用したデジタルコンテンツの権利情報処理を行うシステムを開発した事を発表した。
同システムは、ソニーとソニー・グローバルエデュケーションが開発した「教育データの認証・共有・権限管理システム」をベースに、デジタルコンテンツに関わる権利情報を処理する機能を追加した新システムとなるという。
「今日デジタルコンテンツ制作の技術発展により誰もがコンテンツを発信することができますが、それらの権利情報の管理は、従来通り業界団体等による管理や作者自身によって行われており、効率的な著作物の権利情報の処理や証明も必要とされています。今回開発したシステムは、著作物に関わる権利情報処理に特化し、電子データの作成日時を証明する機能と、ブロックチェーンの特徴である改ざんが困難な形で事実情報を登録する機能、過去に登録済みの著作物を判別する機能を有し、電子データの生成日時と生成者を参加者間で共有・証明することが可能となります」。
改ざん不可能というその特性から著作権管理へのブロックチェーンの活用はかねてより期待されており、既存のプロジェクトとしては米国・フィルムメーカーのコダック社やドイツ発のスタートアップであるコピートラックなどがある。
ソニーとソニー・グローバルエデュケーションは、今年8月にも複数の教育機関のデータを一元的に管理し、信頼性のある学習データやデジタル成績証明書などの登録・参照を可能にするシステムを開発した事を発表している。IPR DAILYが先月報じたところによると、ソニーはブロックチェーン技術に関する特許を23件申請しており、日系企業としては最多だ(世界では26位)。
また、昨年11月にソニーが米国特許商標庁(USPTO)に出願した「分散型台帳の保守のための電子ノードと方法」と「デバイスとシステム」はソニーのブロックチェーンへの本格参入として話題になった。
一つ目の特許の内容は”分散型台帳を維持するための電子装置を提供する”と”ブロックのマイニングプロセスを実行するように構成された回路の開発”と言及している事から、ソニーがブロックチェーンないし分散型台帳のウォレットと、マイニング装置の研究・開発を行っている事が予想される。
「デバイスとシステム」の項目ではセキュリティに関する内容が記載されており、ノードの数がデバイス(マイニングマシン等)に依存する事により生じるセキュリティリスクに関して言及している。ビットコインのように一部のノード(≒マイナー)にハッシュパワーが集中してしまう事を避けるために、多数の仮想ノードを立てる事によって分散化ネットワークを維持するという理論だ。
ソニーがハードとソフトの両側面で実証実験を進めている事が明らかになったものの、プロジェクトの全容はまだ明らかになっていない。ブロックチェーンはソニーのリソースとどのようなシナジーを生むのだろうか。
「また、本システムはデジタル教科書等の教育コンテンツを始めとし、音楽、映画やVRコンテンツ、電子書籍など多様なデジタルコンテンツの権利情報処理に応用可能であり、幅広い分野での活用を検討しています。」
これまでは数多くのスタートアップがブロックチェーン技術の産業利用を掲げて来たが、世界的にも芳しい成果が出ているとは言えない。一方で、2018年に入り大企業の本格参入のニュースが目立つようになった。ブロックチェーン技術に関する特許出願数を見ても上位に入るのは、馴染みのある大企業ばかりだ。バブルに乗じた鳴り物入りのスタートアップの多くがICO後に頓挫してきたが、入念に準備をして来た大企業は今後ブロックチェーン業界の生態系の主役となるのかもしれない。